オーナー・管理会社向け|2026.09.21

マンション・ビル・施設を建てる前に知っておきたい維持管理・清掃のチェックポイント

清掃・ビルメンテナンスの現場から見た「建てる段階で押さえておくと、後々の維持コストが下がる」勘所をまとめました。デザインや初期費用だけで決めると、竣工後に"清掃で苦労する建物"になってしまうことがあります。

マンション・ビル・施設の共用部清掃は、建物が存在する限り毎月かかり続ける固定費です。そして、その費用や美観の保ちやすさの多くは、実は設計・建築の段階でほぼ決まってしまいます。竣工後に「もっと清掃しやすくしておけば…」と気づいても、排水溝や床材、水栓の位置はやり直しがききません。

ここでは、私たちが現場で「これがあれば清掃が楽で安く済むのに」「この仕様のせいで毎回苦労する」と感じてきたポイントを、清掃のプロの視点でまとめます。オーナー様・不動産投資をお考えの方・管理会社様・設計に関わる方の参考になれば幸いです。

マンション共用部(廊下・エントランスまわり)の清掃

まず全体像|清掃のプロが見る10のチェックポイント

1. 排水溝・排水口サイズ・深さ・数は十分か
2. 床材ノンワックス仕様か/剥離が必要か
3. 長尺シートの表面凹凸・溝が細かすぎないか
4. 消火器・設備の設置床置きか、壁掛け・ボックスか
5. 清掃用の水栓・電源・SK各所にあるか/SKの深さは十分か
6. エントランス・ゴミ置き場汚れの持ち込み・水洗いのしやすさ
7. 空調・ダクト・ガラス点検口・作業動線が確保されているか
8. 維持管理の計画清掃頻度・費用を計画に織り込めているか
9. 装飾の格子・設備の下汚れがたまらない・清掃できる余地があるか
10. エアコンの種類お掃除機能なしがおすすめ

以下、それぞれを詳しく解説します。とくに1〜5は見落とされやすく、維持費の差が大きく出るポイントです。

1. 排水溝は「適切なサイズ」を確保する

意外な落とし穴が排水溝・排水口のサイズです。デザイン性を優先した建物で、見た目重視の極端に小さい排水溝が設けられているケースがあります。これだと、雨水や清掃時の水がうまく流れず、水たまり・詰まり・ぬめり・臭気の原因になります。

共用部・外構・ゴミ置き場・機械式駐車場まわりなどは、高圧洗浄で一気に水を流して洗うことが多い場所です。排水が追いつかない設計だと、清掃のたびに水の逃げ場に苦労し、作業時間もコストも増えます。デザインと排水性能のバランスを、設計段階で確認しておきたいところです。

共用部の床を水で洗い流す清掃。排水溝・水勾配が清掃性を左右する

共用部・外部は水で洗い流す清掃が多く、排水が追いつく設計かどうかで作業性が変わります。

2. 床材は「ノンワックス」仕様がおすすめ

床材選びは、初期費用よりも維持費で差が出る代表例です。ワックス仕上げの床は、美観を保つために数年ごとにワックスの剥離・再施工が必要になります。剥離作業は洗浄・すすぎ・再ワックス・乾燥と工程が多く、そのたびに費用と時間がかかります。

一方、ノンワックス対応の床材を選んでおけば、日々の掃除と定期的な洗浄で美観を保ちやすく、剥離のサイクルコストを抑えられます。「初期の床材費」だけでなく「10年・20年でかかる床のメンテナンス費」まで含めて比較するのがおすすめです。

ワックスが劣化・黒ずんだ床(剥離前)
剥離前
ワックスを剥離し再施工した床(剥離後)
剥離後

ワックス仕上げの床は、経年で黄ばみ・黒ずみが出て、数年ごとに剥離・再施工が必要になります(写真は実際のワックス剥離の施工例)。

また、木目調のクッションフロア(CF)など、柄や色によっては汚れ・黒ずみが目立ちやすいものがあります。意匠として選ぶ場合も、「汚れの目立ちにくさ」「清掃で落としきれるか」を一度確認しておくと、竣工後の見た目を保ちやすくなります。

木目調のクッションフロア(CF)は汚れ・黒ずみが目立ちやすい

木目調のクッションフロアは、柄によっては汚れ・黒ずみが目立ちやすいことがあります(動物病院の施工例)。

3. 長尺シートは「表面の凹凸」に注意

共用部で多く使われる長尺シート(塩ビシート)は、滑りにくさや意匠のために表面に凹凸(エンボス)がついています。ここで注意したいのが、凹凸や溝が細かすぎると、その溝に汚れがたまりやすいということ。日常のモップ拭きでは取り切れず、黒ずみとして残りやすくなります。

滑り止め性能は必要ですが、「清掃で汚れを落としきれる範囲の凹凸か」という視点で選ぶと、長い目で見て美観を保ちやすくなります。サンプルの実物で、溝の深さ・細かさを確認しておくと安心です。

マンション共用廊下の長尺シートの定期清掃

共用廊下でよく使われる長尺シート。滑り止めの凹凸と、汚れの落としやすさのバランスがポイントです(共用部の定期清掃の例)。

4. 消火器などの設備は「床置き」を避ける

細かい点ですが、消火器を床に直置きしていると、その周囲が清掃しづらく、ホコリ・汚れがたまりやすくなります。清掃のたびに動かす手間もかかります。

可能であれば壁掛け・消火器ボックス・格納庫にしておくと、床がすっきりして清掃性が上がり、見た目も整います。消火器に限らず、床に物を置かず、拭き掃除の動線を遮らない設計が、清掃の効率と仕上がりを左右します。

5. 清掃用の「水栓・電源・SK(スロップシンク)」を用意する

これは最も見落とされがちで、最も影響が大きいポイントです。共用部の清掃では、高圧洗浄機やポリッシャーを使うための水栓と電源が欠かせません。各階・各エリアの近くにこれらが無いと、長いホースや延長コードを引き回すことになり、作業性が大きく落ち、清掃費に跳ね返ります。

また、施設・共用部に設ける清掃用の流し(SK=スロップシンク)にも注意が必要です。SKが浅いと、バケツに水を汲みにくく、モップやバケツの洗浄もしづらいのです。ある程度の深さと大きさを確保しておくと、日々の清掃がぐっと楽になります。清掃用の水栓・電源・SKは、「どこで・どの機材を使って清掃するか」を想定して配置を決めるのが理想です。

6. エントランス・ゴミ置き場・外構の清掃性

  • エントランス・風除室:外部からの砂・泥の持ち込みを抑えるマットスペースや、水勾配・ドレーンがあると、床とガラスの美観を保ちやすくなります。
  • ゴミ置き場:床が防水で、水勾配と排水口があり、水で洗い流せる設計だと、臭気・汚れ・害虫対策が段違いに楽になります。
  • 外壁・駐車場・外構:汚れにくく高圧洗浄しやすい素材か、コケ・油染み・落ち葉の詰まり対策があるかを確認します。

7. 空調・ダクト・ガラスの「点検口・作業動線」

天井埋め込み型(天カセ)エアコン、排気ダクト、高所のガラスなどは、後から必ず清掃・メンテナンスが必要になる設備です。点検口や清掃口が無い・高所ガラスの清掃方法(開閉・足場)が想定されていない、といった設計だと、清掃のたびに大掛かりな段取りが必要になり費用がかさみます。「どうやって清掃するか」を最初に想定した動線・開口を確保しておきましょう。

8. 維持管理を「計画」に織り込む

最後に、清掃・維持管理の頻度と費用を、建築・長期修繕の計画段階から織り込むことが大切です。維持のしやすさは、日々の清掃費だけでなく、美観・入居率・資産価値に直結します。きれいに保たれた建物は、内見・入居の印象がよく、長く選ばれます。

9. 装飾の格子・設備の下の隙間にも「清掃の余地」を

意匠性のある格子・ルーバー・スリットは、溝が多く汚れがたまりやすいのに拭き取りにくいのが難点です。実際に、エントランスドアに装飾の格子がついていて、溝に汚れがたまり清掃が難しかった現場もありました。デザインとして採り入れる場合は、清掃のしやすさとのバランスを見ておくと安心です。

窓・外壁の縦格子(ルーバー)を高所作業車で高圧洗浄する様子

窓や外壁に縦格子(ルーバー)があると、汚れがたまりやすいうえ、洗浄に高所作業車が必要になり費用がかさみます(枚方市の外壁清掃の例)。

また、設備の下や狭い隙間も見落としがちです。たとえば屋上に太陽光(ソーラー)パネルを設置した建物で、パネルの下の隙間にハトが巣を作っていたことがありました。ところが隙間が小さく、手も道具も入らず、清掃も対策も難しい——という状態でした。ハトの糞や巣は、美観・衛生だけでなく、パネルの発電効率や建物の劣化にも影響します。設備の下は、清掃・点検ができる隙間を確保するか、そもそも侵入させない(防鳥)設計にしておくことが大切です。

屋上に設置された太陽光(ソーラー)パネル

屋上のソーラーパネルは、下の隙間に鳥が入り込みやすく、隙間が小さいと清掃も対策もできません。設置前に清掃・防鳥まで想定しておきたい設備です。

10. 設備選びのワンポイント|エアコンは「お掃除機能なし」がおすすめ

住戸・事務所・施設にエアコンを入れるなら、自動お掃除機能"なし"のモデルをおすすめします。理由はシンプルで、お掃除機能付きは次のようなデメリットが大きいためです。

  • クリーニング費用が高い:構造が複雑で分解に手間がかかり、専門清掃の料金が上がります。
  • 本体価格が高い:同等の性能でも、お掃除機能付きは購入費がかさみます。
  • 不具合が起きやすい:機構が複雑なぶん、故障のリスクが増えます。
  • やってくれるのはフィルターのホコリ回収だけ:自動お掃除機能が掃除するのはフィルター表面のホコリだけで、カビや汚れがたまる内部(熱交換器・送風ファン)は別途、分解洗浄が必要です。「自動でお掃除してくれるから安心」とはなりません。

長い目で見れば、お掃除機能なし+定期的なクリーニングのほうが、費用・手入れ・故障リスクのバランスが良いケースが多いです。メーカーで選ぶなら、構造がシンプルで信頼性の高いモデルが多いダイキンなどがおすすめです。(参考:エアコンは1年でどれくらい汚れる?(ATP検査の実測)/エアコンクリーニング)

まとめ|"清掃しやすい建物"は、資産価値を守る

排水溝のサイズ、ノンワックスの床材、長尺シートの凹凸、消火器の設置、清掃用の水栓・電源・SK——どれも小さなことに見えて、竣工後の維持コストと美観を長く左右します。デザインや初期費用に加えて、「10年後・20年後の清掃のしやすさ」という視点をぜひ設計に加えてください。

おそうじクルーは、大阪・京都でマンション・ビルの定期清掃やビルメンテナンスを手がけています。新築・大規模修繕の計画段階での清掃・維持管理のご相談から、竣工後の定期清掃まで、ワンストップでお手伝いできます。床材のメンテナンス(ワックス・剥離)についてもお気軽にご相談ください。

FAQ

よくあるご質問

共用部の清掃は建物が続く限り毎月発生する固定費です。設計段階で清掃のしやすさを考えておくと、日々の清掃費・数年ごとのメンテナンス費・美観維持のコストが大きく下がり、入居率や資産価値にも直結します。逆に、排水溝が小さい・ワックス床・清掃用の水栓がない、といった見落としは、竣工後にはやり直しがきかず、維持費として払い続けることになります。

維持コストの面ではノンワックス仕様がおすすめです。ワックス仕上げの床は美観を保つために数年ごとの剥離・再ワックスが必要で、そのたびに費用と作業時間がかかります。ノンワックス対応の床材なら、日々の掃除と定期的な洗浄で美観を保ちやすくなります。

はい。新築・大規模修繕の計画段階で、清掃・維持管理のしやすさについてのご相談を承っています。竣工後の定期清掃までワンストップでお手伝いできます。まずはお気軽にご相談ください。

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