防災・維持管理|2026.09.22

関西の浸水被害に備える|浸水リスクの高い地域・事前対策・浸水後の対処法

台風や大雨のたびに、「うちの建物は大丈夫だろうか」と気になったことはないでしょうか。浸水は完全には防げませんが、被害を小さくするためにできることは、思っているより多くあります。清掃・ビルメンテナンスの現場で見てきたことをまじえて、確認・備え・浸水後の対処まで通してお伝えします。

浸水は、川のそばや低い土地だけの話ではありません。街なかの排水が追いつかずに道路や地下があふれる「内水氾濫」のように、川から離れた場所でも起こります。私たちが定期清掃でうかがう建物でも、排水口が落ち葉でふさがっていたり、地下への入口に段差がなかったりと、いざ強い雨が降ると弱い部分を抱えたまま使われているケースは少なくありません。

とはいえ、必要以上に不安になる必要はありません。やるべきことは、次の3つの順番で考えるとシンプルになります。

この記事の流れ

1
リスクを知る
ハザードマップで、自分の建物がどんな浸水を想定されているか確認する。
2
備える
水の入り口・排水まわりを点検し、止水板や連絡手順を用意する。
3
正しく動く
浸水したら、安全確保・記録・連絡のあとに、清掃と乾燥を進める。
この記事は防災の一般的な情報をまとめたものです。実際の避難は、お住まいの自治体が出す避難情報や気象庁の発表に必ず従ってください。地域名や区域の記載は各公的ハザードマップでの確認を前提としており、特定の地域の危険度を順位づけるものではありません。

浸水被害にはどんな種類がある?

ひとくちに「浸水」と言っても、水の出どころはいくつかあります。出どころが違えば、水の来かたも、建物の傷み方も変わります。対策を考える前に、まずこの違いを押さえておくと判断しやすくなります。

種類どんなときに起こるか建物への主な影響
河川氾濫
(外水氾濫)
大雨や台風で川の水位が上がり、堤防を越えたり壊れたりして、川の外へ水が広がる。大量の水が一気に流れ込み、広く深く浸かりやすい。流れが速く、被害も大きくなりがち。
内水氾濫下水道や排水路の処理能力を超える雨が降り、雨水がマンホールや側溝からあふれる。都市部で起こりやすい。川から離れた場所でも道路の冠水や地下・1階の浸水が起こる。じわじわと水位が上がる。
高潮台風の低い気圧と強風で海面が吸い上げ・吹き寄せられ、海面が普段よりぐっと高くなる。沿岸部や低地に海水が流れ込む。塩分を含むため、設備への影響が残りやすい。
大雨による
排水能力超過
短時間の強い雨で、その場の排水(雨水桝・側溝・排水口)が追いつかなくなる。敷地内やエントランス、駐車場などが局所的に冠水する。日常の清掃・点検で軽減しやすい面もある。

とくに混同しやすいのが「外水」と「内水」です。川からあふれるのが外水、街なかの排水があふれるのが内水——この一言で覚えておくと十分です。都市部では、この2つに高潮が重なることもあります。

関西で浸水リスクを確認しておきたい地域

ここからは、大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山について、「どんな場所を確認しておくとよいか」を見ていきます。順位づけではなく、あくまで確認のきっかけとしてお読みください。実際に自分の建物が該当するかは、各リンク先の公式ハザードマップで確かめられます。

大阪府

大阪市を中心に、淀川・大和川・寝屋川といった川の周辺や、沿岸部・低地(ゼロメートル地帯を含む)では、河川洪水・内水氾濫・高潮という複数の水害が重なりうる地域があります。市街地は舗装が多く水がしみ込みにくいため、川から離れていても内水氾濫には注意が必要です。

京都府

京都市では、桂川・鴨川・高野川・山科川などの河川洪水や、市街地の内水氾濫について確認が必要な地域があります。京都市のWeb版ハザードマップでは、河川ごとの浸水深に加えて、浸水継続時間や家屋倒壊等氾濫想定区域まで確認できます。

兵庫県

神戸市や阪神間などでは、川の洪水にくわえて、沿岸部の高潮についても確認しておきたい地域があります。兵庫県は、風水害の情報をまとめた「CGハザードマップ」を公開しています。

奈良県・滋賀県・和歌山県

奈良県では大和川水系など、滋賀県では琵琶湖へ注ぐ多くの河川、和歌山県では紀の川水系などの周辺で、洪水浸水想定区域が設定されている場所があります。いずれも県が浸水想定区域図を公表し、市町村がそこに避難情報を重ねたハザードマップを作成しています。

ハザードマップは自分でも確認できます

自宅や所有・管理している物件のリスクは、国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」で、住所からまとめて調べられます。手順は3ステップです。

1
サイトを開く
2
重ねて見る
「重ねるハザードマップ」に住所を入れ、洪水・内水・高潮などを地図に重ねます。
3
地元の地図へ
「わがまちハザードマップ」から、その市町村の詳しい地図を開きます。

雨が降っている最中のリアルタイムの状況は、気象庁のキキクル(危険度分布)が便利です。浸水・洪水・土砂災害の危険度が色分けで表示され、10分ごとに更新されます。

ハザードマップで確認すべき5つのポイント

地図を開いたら、なんとなく眺めるのではなく、次の5点にしぼって見ると、そのまま備えにつながります。マンション・店舗・施設の管理者の方はとくに意識したいところです。

浸水想定区域その建物が、洪水・内水・高潮などで浸水が想定される区域に入っているか。
想定される
浸水深
何メートル浸かる想定か。1階までなのか、地下まで水没するのかで、避難のしかたが変わります。
浸水継続時間水が引くまでどれくらいかかる想定か。長ければ、その間の停電・断水・孤立まで考えておきます。
家屋倒壊等
氾濫想定区域
流れの速い水で建物が壊れたり流されたりするおそれのある区域か。該当するなら早めの立ち退き避難が基本です。
避難場所・
避難経路
どこへ、どの道で逃げるか。夜間や浸水した状態でも安全に移動できるかを、事前に歩いて確かめておきます。

浸水する前にできる7つの対策

浸水そのものは防げなくても、被害の大きさは準備で変わります。今日からできることを7つにまとめました。

  • 排水口・側溝を清掃する。落ち葉やゴミで詰まっていると、たいした雨でなくても水があふれます。まずここが基本です。
  • 雨水桝(うすいます)の詰まりを見ておく。敷地内の雨水桝が土砂でふさがっていないか、ふたを開けて確認します。
  • 水の入り口を把握する。エントランス、地下への入口、勝手口、通風口など、どこから水が入りうるかを地図にしておきます。
  • 止水板・防水板を用意する。出入口にはめる止水板があれば、浅い浸水を食い止められることがあります。
  • 土のう・吸水土のうを備える。水でふくらむ吸水土のうは、軽くて保管しやすく、設置も簡単です。
  • 低い場所の大切な設備を守る。電気室・機械室・サーバー・在庫などは、かさ上げや上階への移設を検討します。
  • いざというときの動き方を決めておく。誰が・何を・どの順でやるかと連絡先を、紙にも残しておきます。

同じ「備え」でも、建物の使い方によって優先順位は変わります。

マンション

地下駐車場・電気室・エレベーターピットの浸水対策と、共用部の排水清掃。住民への連絡ルールも決めておく。

店舗

出入口の止水板、商品・レジ・厨房機器の置き場所、そして「どの段階で店を閉めるか」の基準。

クリニック

電子カルテのサーバー、医療機器、薬剤の保管場所。停電に備えた電源の確保も。

介護施設

入所者の避難には時間がかかります。早めの避難判断と、移動の手段・人手をあらかじめ確保。

マンション・店舗・施設で特に注意したい場所

建物のなかでも、水が集まりやすく被害が大きくなりやすい場所は、だいたい決まっています。図面で位置を押さえ、優先して守る順番を考えておきましょう。

  • エントランス(水が入り込む、いちばんの入口)
  • 地下駐車場・地下倉庫(水没すると被害も復旧費も大きい)
  • 機械室・電気室(浸水は停電・設備停止に直結する)
  • 外階段・ドライエリア(水がたまり、地下へ流れ込む通り道になる)
  • 排水溝・雨水桝(詰まっていると一気にあふれる)
  • 厨房(排水の逆流にも注意)
  • 重要書類・備品の保管場所(低い位置なら見直しを)

現場から

地下は、いちばん被害が大きくなりやすい場所です。水は必ず低いほうへ流れ込むうえ、いったん入ると自然には抜けません。地下駐車場や地下倉庫がある建物では、入口の止水対策と、電気室・ポンプの位置の確認を最優先にしておくと安心です。

実際に浸水しそうなときの対処法

雨がひどくなってから慌てないよう、状況が進むごとに何をするかを時系列で並べておきます。大前提として、感電・漏電や急な増水の危険があるため、無理な作業はせず、安全の確保と避難を最優先にしてください。

  • 大雨が予想される段階
    気象情報と自治体の発表を確認。止水板・土のう・懐中電灯を、すぐ使える場所へ出しておきます。避難先と経路もこの時点で見直します。
  • 浸水の可能性が出てきた段階
    止水板や土のうを設置。地下や低い場所の設備・車両を、上の階や高い場所へ移します。キキクルで危険度の高まりを確認します。
  • 建物周辺に水がたまり始めた段階
    屋外での作業はやめます。地下には入りません。ブレーカーの操作は、安全を確認できる範囲だけにとどめます。
  • 避難が必要な段階
    自治体の避難情報に従い、早めに動きます。水位が上がってからの移動は危険です。マンションなどでは、状況によって上の階へ逃げる「垂直避難」が安全なこともあります。

建物が浸水してしまったら?最初にすること

水が引いても、すぐに雑巾を持って掃除を始めるのは待ってください。まずは安全の確認と、記録・連絡が先です。順番はこうなります。

  1. 人命と安全を最優先にする。
  2. 電気・ガスの危険を確認する。漏電やガス漏れの疑いがあれば、自分で対処せず電力・ガス会社や専門業者へ。
  3. 浸水の状況を写真・動画で記録する。壁の跡など、水位の高さがわかるように撮っておきます。
  4. 保険会社や管理会社などに連絡する。
  5. 水が引いたら、汚泥・汚水を取り除く。
  6. 洗浄・消毒を行う。
  7. 内部までしっかり乾かす。
  8. 傷んだ建材・設備は、必要に応じて交換・修繕を検討する。

浸水後に注意したいカビ・臭い・衛生問題

浸水のあとで意外と多いのが、少し経ってからのカビと臭いのトラブルです。表面が乾いたように見えても、汚泥や水分が残っていると、あとから問題が出てきます。とくに次のような、水を含みやすい部分は乾きにくいので注意が必要です。

  • 畳・カーペット(水を吸い込み、なかなか乾かない)
  • 木材・石膏ボード・壁紙(内部に水分が残るとカビの温床に)
  • 収納の中・家具の裏(空気がこもって乾きにくい)

現場から

「表面が乾いたから大丈夫だと思っていたら、数週間してカビと臭いが出てきた」というご相談は、めずらしくありません。石膏ボードや木部は、水を内部まで吸い上げます。拭き取りだけでは中が湿ったままになりやすいので、送風・除湿で時間をかけて乾かすことが肝心です。

※ 衛生面・健康面への具体的な効果は、状況によって異なるため、この記事では断定していません。心配な場合は専門機関にご相談ください。

浸水後の清掃はどこまで自分でできる?

自分たちで対応できる範囲か、業者に相談したほうがよいか。線引きに迷ったときの目安を、比較で整理しました。

自分で対応しやすいケース専門業者への相談を検討するケース
少量の雨水で済んだ広い範囲が浸水した
被害の範囲が限られている汚泥が大量に入り込んだ
汚水は混じっていない汚水が混じった可能性がある
電気設備などに影響がない地下施設が浸水した
すぐに乾かせる程度すでにカビ・臭気が出ている
店舗・医療・介護など、営業への影響が大きい
清掃・乾燥の作業が大規模になる

浸水被害を防ぐには「普段の清掃」も大切

浸水対策というと、大がかりな工事を思い浮かべるかもしれません。ですが、日々の清掃・点検も、立派な対策の一部です。とくに排水まわりは、詰まりがあるだけで、少しの雨でもあふれやすくなります。

  • 排水口清掃・側溝清掃
  • 雨水桝まわりの清掃
  • 共用部の清掃(落ち葉・ゴミの除去)
  • 地下施設・機械室まわりの清掃・点検
  • 建物周辺の清掃

現場から

定期清掃でうかがう建物では、排水口や側溝が落ち葉・土砂でふさがっているのを、本当によく見かけます。普段は水が少ないので気づきにくいのですが、ゲリラ豪雨のように一度に強く降ると、詰まった排水はあっという間にあふれます。水の通り道を確保しておくだけで、防げる冠水もあります。

ただし、清掃をすれば浸水を必ず防げるわけではありません。排水まわりの清掃は「あふれにくくする」ための一手であって、ハザードマップの確認や止水対策と組み合わせてこそ意味を持ちます。

共用部の排水まわりの清掃。詰まりを防ぐことが浸水対策の一部になる

排水口・側溝・雨水桝の詰まりは、少しの雨でも冠水の原因になります。日常の清掃で「あふれにくい状態」を保つことが、地味ですが効きます。

まとめ|「確認 → 備える → 正しく動く」

最後に、この記事の流れをもう一度なぞっておきます。難しいことは一つもありません。

  • ハザードマップを確認する
    浸水想定区域・浸水深・浸水継続時間などを見ておきます。
  • 建物の浸水経路を確認する
    入口・地下・低い場所など、水の入り道を把握します。
  • 排水設備・側溝・雨水桝を点検・清掃する
    詰まりをなくし、あふれにくい状態にしておきます。
  • 止水板・土のうなどを備える
    必要に応じて、すぐ使える場所に用意します。
  • 浸水したら、安全確保・記録・連絡・清掃・乾燥
    この順番を守れば、被害の拡大を抑えやすくなります。

おそうじクルー(株式会社Astraea)は、大阪・京都を中心に、ビルメンテナンスやマンション・ビルの定期清掃、店舗・クリニック・介護施設などの清掃を、自社施工・写真での作業報告で承っています。排水口・側溝・共用部のふだんの清掃から、浸水後の清掃のご相談まで、LINEからお気軽にどうぞ。なお、防水工事・止水工事・電気工事・建築工事などの専門工事は対象外のため、必要に応じて各分野の専門業者へのご相談が必要です。

FAQ

よくあるご質問

国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」で確認できます。住所を入力すると、洪水・内水・高潮などの浸水想定区域や想定される浸水深を地図に重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」と、各市町村が作成したハザードマップにリンクする「わがまちハザードマップ」があります。あわせて、お住まいの自治体の公式ハザードマップもご確認ください。

まず人命と安全を最優先にしてください。感電・漏電の危険があるため、電気やガスの安全を確認し、無理に室内へ入らないことが大切です。安全が確保できたら、浸水の状況を写真や動画で記録し、保険会社や管理会社などに連絡します。清掃は水が引いてから、汚泥・汚水の除去、洗浄・消毒、十分な乾燥という順で進めます。

少量の雨水で被害範囲が限定的、汚水の混入がなく電気設備に影響がない場合は、ご自身で対応できることもあります。一方、広範囲の浸水、汚泥や汚水の混入、地下施設の浸水、カビ・臭気の発生、店舗・医療・介護施設など営業への影響が大きい場合は、専門業者への相談を検討することをおすすめします。

はい。マンション共用部・店舗・クリニック・介護施設などの浸水後の清掃について、LINEからご相談・お見積りいただけます。なお、防水工事・止水工事・電気工事・建築工事などの専門工事は対象外のため、必要に応じて各分野の専門業者へのご相談が必要です。

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